天龍源一郎さん、プロレス、家庭、人生を語る！『まさにミスター・プロレス！』

出典：http://meigen.keiziban-jp.com/genichirou

一昨年の引退発表から現役最後の１年を追ったドキュメンタリー映画「ＬＩＶＥ　ＦＯＲ　ＴＯＤＡＹ－天龍源一郎－」が４日公開される。１３歳で大相撲入門。幕内まで昇進して、７６年に全日本プロレス入り。半世紀以上、体を張ると、さすがにあちこちガタがきた。しかし引退を決めた最大の理由は長年連れ添った７歳下の妻、まき代さんの大病だった。

「乳がん。ある日女房が『お父さん、どうしたらいい？』と。僕が安易に『手術したほうがいいと思うならするべきなんじゃないの』と答えたら、『そんなこと言ってるんじゃないわよ！　手術のために、いろんなことをどう進めればいいか相談してるんじゃない！』って罵声を浴びせられたんですよ」やっと、気づいた。

「あ、ほんっとにおれはいい加減な亭主だなって。それまでは、おれが自分の体使って家族を食わしてるんだってうぬぼれがあったんです」

８２年に知り合い、半年で結婚。以来、亭主を支え続けた古女房。がんの後、心臓弁膜症や胆石症、糖尿病も患った。体調は一進一退。

「プロレスで地方に出ると、女房は娘を連れ京都の実家に帰る。『巡業の間、実家に帰してやるなんて心が広い旦那だ』と自画自賛していたけど、実は女房は実家の飲食店で働いて家計の足しにしていたんです」

仲間と飲み歩いたクラブのツケを、クラブで働いて返したことも。結婚翌年に生まれた娘の紋奈（あやな）さんは父を憎んだ時期もあったが、今は事務所「天龍プロジェクト」を率いる代表だ。

「ストレスもがんの原因。おれが好き勝手にプロレスをやれたのは、女房と娘のおかげです」

福井の田舎育ちで、夏は川で泳ぎ、冬はスキーに明け暮れた。中学２年で１８２センチ。ある日、父が理髪店で偶然出会った相撲関係者に推薦したことがきっかけで、夏休みに大鵬や麒麟児がいる二所ノ関部屋に体験入門。「修学旅行」など舟木一夫の学園三部作が大ヒットし、街に流れていた。

「若い仲間と稽古しているうちになじんじゃった。オヤジから電話で『２学期だぞ』ってせかされ帰郷すると、長男で跡取りだし『力士になれるわけない』とクギを刺されました」

しかし秋になると部屋の関係者がきて父親を口説き落とし、入門決定。

「後から入った輪島さんが昇進するのを見て、悩んだこともありましたけど、土俵で白黒つくのが性に合い、厳しい稽古も楽しめた。大鵬二世っておだてられ上機嫌でいたら、同じように呼ばれている先輩が何人もいたのにはまいったけど」

その後、親方が亡くなると跡目争い（押尾川事件）が起き嫌気がさす。マスコミ関係者の「プロレスでもやったら」の助言に心が動いた。

「馬場さんに招かれたのが、テリー・ファンクとジャンボ鶴田のＮＷＡ世界戦。蔵前国技館が、相撲とはまったく違う雰囲気で、お客さんがエンジョイしている。カルチャーショックでした」

興味のなかったプロレスに転向。日本でコーチを受け渡米、テキサスではファンク兄弟はじめ一流レスラーから基本をたたき込まれる。相撲で培った実力も買われ、テッド・デビアス相手に２カ月でデビュー。やがて馬場から帰国命令が出た。

「決め技もなく、日本で通用するのか不安な気持ちで羽田空港に降り立ちましたよ。ただ、これでプロレスでメシ食っていかないとっていう気構えだけがありました」

全日プロでは馬場、鶴田に次ぐ３番手と序列も良かったが、試合ぶりは振るわず、客からは「天龍はショボイ」「プロレスをわかってない」とさんざん。再びテキサス行きを考えた時期、負傷した選手の代打で名選手ビル・ロビンソンのパートナーに起用され、馬場・鶴田組と対戦したことが運命を変えた。

「気楽に新日本プロレスのアントニオ猪木さんの延髄斬りや卍固めをやったんです。当時はよそのエースのまねはタブー。新聞が面白おかしく書いて、会社も『天龍にこんな大きな紙面を割いてもらえるとは』と」

好きなことをぶつければ、観客に伝わる。プロレスに開眼すると、やがて『天龍革命』を旗印に全日本のスタイルをも変え、『明るく楽しく激しく』ぶつかり合うプロレスを築き上げた。多くの人々をひきつけた現役人生。

「いつも家族に言うんです。『明日の朝おれが起きてこなかったら、天龍源一郎はなんの後悔もなく満足な人生だったから、にぎやかに送り出してくれよ』って。こんな映画作ってもらえて、取材にきてくれる。冥土の土産にいいものできたなって。あの世にいったら馬場さんとジャンボに自慢してやろうと思ってますよ」

魂のこもった言葉は滑舌すら超える。

■てんりゅう・げんいちろう　タレント、元プロレスラー、元大相撲力士。１９５０年２月２日、福井県勝山市出身。６６歳。６３年、１３歳で二所ノ関部屋入門、天龍の四股名で７３年１月場所から１６場所在位。７６年、２６歳で全日本プロレス入り。同年１１月１３日、米テキサス州でデビュー。８４年、ＵＮヘビー級王座奪取。ジャンボ鶴田との鶴龍コンビで活躍。８５年からは長州力らの参戦で闘争心むき出しのスタイルへ転換。８７年、阿修羅・原と天龍同盟結成。８９年、鶴田を破り三冠統一ヘビー級王者に。９０年に新団体ＳＷＳ移籍、９２年ＷＡＲ旗揚げなど数々の団体に上がり、２０１０年「天龍プロジェクト」立ち上げ。１５年１１月１５日、オカダ・カズチカ戦を最後に引退。ジャイアント馬場、アントニオ猪木の２人からピンフォール勝ちした唯一の日本人レスラーである。

引用元：http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170202-00000019-ykf-ent